2012年4月2日月曜日

歩行と激しい運動、循環器疾患の予防効果は同程度。



歩行と激しい運動、循環器疾患の予防効果は同程度。

米国の閉経後女性73,743人を約3年間追跡したところ、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患に対する予防効果は、歩行でも激しい運動でも同じくらいだった。ハーバード大学のグループによるこの研究は、ニューイングランドジャーナルオブメディシン2002年9月5日号に報告された。

運動ガイドラインの変遷

心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患に対して、運動が予防効果を持つことは、以前から知られていた。そのため、いろいろな政府機関や専門家団体が、健康のために運動を勧めるガイドラインを公表している。

かつては、激しい運動を勧めるガイドラインが多かった。例えば、1986年に米国スポーツ医学協会が示した指針では、「20分以上の激しい運動を、週に3回以上」するよう勧めていた。

ところが最近では、「30分以上の中程度の運動を、ほとんど毎日」するというような、より軽度の運動を勧めるガイドラインが中心になっている。

けれども、ウォーキング程度の中等度の運動が、激しい運動と比べてどの程度の効果があるのか、まだよく分かっていない。研究グループは、この問題を検討した。


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全米から7万人が参加

1994−98年にかけて全米40施設で募集した、50−79歳の閉経後女性73,743人を対象にした。自己回答の質問票を使って、余暇時の身体活動についてたずねた。身体活動は、歩行、激しい運動(エアロビクスやテニスなど)、中等度の運動(自転車乗りや軽い水泳など)、軽度の運動(ボーリングやゴルフなど)に分けて質問した。

平均で3.2年(最長で5.9年)の追跡調査を行ったところ、345人が心筋梗塞などの冠動脈疾患にかかり、1,551人が冠動脈疾患、心不全、脳卒中などを合わせた循環器疾患になった。歩行のレベルや激しい運動のレベルで、対象者を5グループに分け、病気の発生率を比べた。

予防効果の大きさは同じ

その結果、歩行のレベルが最低のグループ(歩行時間ゼロ)と比べると、最高レベルのグループ(時速5kmの早足歩行を毎日40分以上)では、冠動脈疾患のリスクが39%低く、循環器疾患のリスクが32%低かった。

また、激しい運動のレベルが最低のグループ(全くしない)と比べると、最高レベルのグループ(毎日20分以上)では、冠動脈疾患のリスクが42%低く、循環器疾患のリスクが24%%低かった。


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つまり、歩行ていどの運動でも、激しい運動でも、冠動脈疾患や循環器疾患に対して、同じくらいの予防効果があるという結果だった。

さらに、歩行による予防効果は、女性の人種(白人か黒人か)、年齢、肥満度の違いにかかわらず、同じように認められるという結果だった。

こうした結果から研究グループは、人種・年齢・肥満度にかかわらず、歩行と激しい運動いずれも、閉経後女性の循環器疾患リスクに対する相当程度の低下と結びついていると結論している。

仕事による身体活動は調べず

ところで、研究グループによると、これまで40件以上の疫学研究が、運動と循環器疾患との関係を調べている。けれども、対象者の中に女性が含まれているのは1/3ほどにすぎず、運動のなかでもとくに歩行の意義を調べたものは6件ほどしかない。しかも、黒人女性を対象に含めて、歩行と循環器疾患との関係を調べた研究としては、今回の論文が初めてだという。


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歩行ていどの運動でも、激しい運動と同じくらいの循環器病予防効果が得られる理由として、研究グループは以下の点を挙げて考察している。1)中等度の運動でも、激しい運動と同程度の拡張期血圧の低下があり、収縮期血圧の低下はむしろより大きい。2)中等度の運動と食事療法を組み合わせると、(循環器疾患の高リスク群である)糖尿病が予防できる。3)中等度の運動でも激しい運動でも、消費エネルギーが等しければ、脂肪組織の減少も同程度に生じる。4)軽度の運動でも激しい運動でも、気分を向上させる効果がある。

この研究の問題点として、余暇時の運動を調べているだけで、仕事を通した身体活動の差を考慮していない点がある。もしも仮に、余暇時の運動を多くするグループが、仕事による身体活動の量も多ければ、(仕事による身体活動を考慮しないことで)余暇時の運動の効果を過大評価することになる。反対に、余暇時の運動を多くするグループは、仕事による身体活動の量が少なければ、余暇時の運動の効果を過小評価することになる。また、余暇時の運動が多くても少なくても、仕事による身体活動の量に差がなければ、過大評価も過小評価も生じない。けれども今回の対象集団が、どれにあてはまるのかは分からない。


「女性の健康」、事業も研究も必要

さいきん、日本のいくつかの自治体が、「女性の健康」に焦点をあてた施策の推進を打ち出している。具体的な事業を行うのはもちろん大切だが、どのような要因が女性の健康と関わっているのか、分かっていないことはまだまだ多い。

女性の健康の改善に取り組む自治体が、今回の論文のような研究も合わせて行えば、より充実し施策になるのではないか。初年度1億円、以後年間2000万円の予算を10年分も確保すれば、女性の健康に関する研究プロジェクトとしては、世界的な水準のものができるだろう。ダム一つ作る何十分の一の費用で、自治体のユニークさをアピールできるはずだ。

研究デザイン 前向きコホート研究。

出典 Manson JE, et al. Walking compared with vigorous exercise for the prevention of cardiovascular events in women. New England Journal of Medicine 2002;347:716-725.



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